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そもそも地力とは?

みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.68

2026年1月 業務執行理事 南埜 幸信

前回は地力窒素についてお話をさせていただいた。地力窒素とは、土壌中の有機物が微生物の働きによって分解され、作物に吸収可能な形になった窒素のことで、それはすなわち作物を育てる養分としての窒素ということで、それが、施肥という肥料での養分供給というよりはむしろ、土が長い年月蓄えてきた、また、先祖の土づくりになかで長年地域の里山・里海の資源によって蓄えられてきた有機物という資源を、、根圏微生物を中心とした土壌中の微生物の働きによって作物にもたらされる窒素であり、その影響力は非常に大きい。まさしく、有機農業における土づくりの本質をよく理解できる内容であると思う。
そこで、一歩進んで、では地力という概念はどのようになるのだろうかということである。人間に例えると、体力とは?ということになると思うが、生命力が気力・体力・免疫力等の生命活動全体の力の総合的な評価と考えれば、単純に地力は養分のたくさんある土ということにはならないことが理解いただけると思う。何度もお話をして申し訳ないが、土は生きている。天文学的な数の生物と微生物の小宇宙ともいうべき集合体で、あたかも生命を持つもののように活動する、複雑な生命系のシステムこそが土の実態である。そのことからいうと、地力とは、この土の生命系システムが持つ総合的な力というべきものであろう。
この土の生命系システムが持つ総合的な力の構成要素として、一般の土壌学では、土の物理性・化学性・生物性という整理をしてそれぞれの健全指標を検証するという手法がとられる。この3つの要素が土の総体であり、これらはどの1つが欠けても健康な土壌にはならない。そしてこの三つの要素はそれぞれが独立して存在しているのではなく、互いに影響を与え合い、密接不離な関係にある。しかしながら、慣行農業(化学農法)は、どちらかといえば窒素肥料を中心とする養分の化学性を中心にして、物理性や生物性を重要視してこなかったことが大きな問題だと考えられてきた。


EM研究所資料

例えば、土壌病害をもたらす病原菌を殺すための土壌消毒(基本的に生物を殺すガスを作付け前に土中に注入)は、病害虫や病原菌だけではなく、土壌の微生物や小動物も死滅させ、さらに、化学肥料に頼り有機物を軽視した結果、生物性のバランスが崩れた土壌になり、塩類集積や連作障害など様々な弊害が現れてきている。これが世界的に問題となってきた農業の持続性の課題とリンクし、オーガニックがその解決策としてスポットを浴びてきたという経過である。
従って、土づくりのためには、特に物理性を改善(土を柔らかく)し、生きた根をたくさん土中にもたらし、根圏微生物の活動を促進し、この生物相の改善を積極的に行う必要がある。生物性の根底を支えているのが土壌微生物であるからである。また、この生物性(微生物性)の改善は物理性・化学性の改善にも大きく貢献する。化学性、物理性といった土壌診断を適宜行い、総合的で適切な改善を実施する必要がある。
圃場をオーガニックに転換していくためには、私たちはまず、土壌の健康診断を化学的な養分バランスの検証の前に、この物理性・化学性・生物性の検証を実施してきた。一番わかりやすいのは土壌の断面調査。人間の健康診断でいえば、レントゲンや内視鏡カメラなどによる土中の状態の確認である。それに加えて、人間でいえば血液検査に相当する土壌の養分の化学分析をして、それらを総合的に判断して、導入していく作物の生理を軸に、畑ごとの改善処方箋を作り上げていくのである。

次号に続く

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