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油は地域の文化そのもの

みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.62

2025年10月 業務執行理事 南埜 幸信

先週号につづき、国産の植物油についての取り組みです。岩手県で有機農業の技術勉強会を実施しようと、現地の農業試験場、県庁などを訪問させていただくなかで、たまたま、かねてから注目していた国産油の搾油メーカーの岩手県一関市大東町の「デクノボンズ社」にお伺いして、社長と意見交換がすることができ、その話が印象的であったので、皆様とぜひ共有したいと、筆を走らせている。

デグノボンズ社は、植物油の搾油メーカーで、➀生産者に油脂用作物を作付け依頼し、原料の手配と仕入れをする部門と、➁菜種やひまわり、えごまなどの油脂作物の栽培については生産者にお願いするものの、収穫から乾燥、調整選別を、生産者に代わって請け負ういわゆるコントラクター事業部門と、➂原料から圧搾法で搾油して、加工品を製造したり、油を販売する部門と、大きく三つの部門に分かれるところ、デグノボンズ社は③の事業をすすめる事業体である。

まず小野寺社長には開口一番、不思議な会社の名前の由来について尋ねると、ふるさとの賢者、宮沢賢治の有名な詩である「雨にも負けず、風にも負けず」のなかの一説に出てくるフレーズで、これを大切にしたいという意思の表れが社名とのこと。そういう私も、言われてみればなにか思い出すのだか、長い詩なので、たいていはそのフレーズまでたどり着いていないのできっと印象が薄いのであろう。

そして社長に、なぜ、輸入物と比べて、異常に高価な国産の植物油の取り組みを始めた契機についてうかがってみると、それは、油は地域文化そのもので、地域文化を、次代に継承するために、地域文化のなかに、油の地域御用達というキーワードを残し続けたいからという感動の一言をいただけた。社長曰く、岩手県には昔は、各地域に「あぶらや」さんがあり、自分の家で作った菜種やえごまなど、油の原料となるものをこの「あぶらや」さんに持ち込み、油を搾ってもらったものと、油粕を家に持ち帰り、特に油粕は家の牛のエサ(殆どが農耕用)や、肥料として活用という、地域経済の中に、農業がまさにサーキュラーエコノミーとして動き、地域経済の持続的発展の核心であったという事実である。

以下デクノボンズ社のホームページより https://dekunobonz.jp/
油は地域文化である。文化なのかと問いたいくらいの状況で、地域の輪作作付け、地域の持続的農業の推進について、すべての有機生産者が油脂植物の持続的な輪作導入という、新たな共同体組織の創生がカギとなると考えてきたので、油は地域文化であるという日本農業の新たな視点は、私にとっては、油脂植物の導入促進につながる大きなヒントになりえると考えている。
そしてこのデクノボンズ社、ホームページから紹介すると、下記の通りである。
➀大切にしていること
想像してみてください。きれいな花が一面に咲き誇り、風に花がそよぎ、ミツバチが飛びかい、太陽に照らされ明るくまぶしいくらいに輝く風景を。
菜種油、ひまわり油が出来上がるまでに自然は多くの恵みを私たちに分け与えてくれます。 効率だけでは語れないすべての要素を私たちは大切にします。

➁寄り添って
豊かな自然と里山の恵み。そんな当たり前の風景が続いていくと信じていた子供のころ。あの風や光を子どもたちに伝えていくためにあなたと私たちにできることがあります。
畑と食卓を繋ぎ、心かよった豊かな暮らしの毎日に今私たちができることを大切にします。

➂食は文化
一関市の花は「菜の花」
郷土の偉人、建部清庵先生が飢饉に備えて栽培を推奨した四木一草の一つに菜の花があります。
昔食べたあの菜種油がもう一度食べたい。そんな農家の思いに応えるため弊社は生まれました。根幹にあるのは自給自足。顔の見える生産者の国産原料のみを扱い、添加物を一切使用せず、油本来の風味を大切にします。畑と食卓を繋ぐオーガニックな関係が私たちのよろこびです。

今年は春のまんのう町のひまわり栽培と搾油の視察から始まり、幸せの黄色いウェーブを南は沖縄の宮古島から、岩手県まで追いかけてきた。特に宮古島と千葉県は、有機での油脂用ひまわり栽培に取り組んできた。残念だが多くの人には、国産の油などは経済的に合わないからやめるようにという忠告を多々いただいた。しかし、一年の締めの時期に、岩手のデクノボンズ社の小野寺社長からいただいた「油は地域文化である」の意義を再度各地の生産者や製油メーカーの方々と共有し、地域文化の多様な積み上げで、地域農業全体の活性化と、加えて2%程度と言われる油の自給率の改善に努めていきたいと考えている。地域文化を次代につなげるためにオーガニックはある。

次号に続く

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