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リジェネラティブ農業とは

みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.54

2025年9月 業務執行理事 南埜 幸信

最近オーガニックのなかでもリジェネラティブ農業という言葉をよく聞くようになってきた。一般社団法人日本有機加工食品コンソーシアムの会員農家の北海道の十勝のアグリシステムさんや、千葉県の匝瑳でソーラーシェアリング+オーガニックで農業に取り組む生産者の方々など、この農業をテーマに取り組む生産者が少しずつ増えてきて、アメリカでは認証制度(リジェネラティブ・オーガニック認証、ROC認証)もスタートしていて、パタゴニア社などは、企業を挙げてこの農業の推進に取り組んでいるところである。

リジェネラティブ農業とは、環境・生態系再生農業という意味であり、近年の農業の課題、特に、長年の化学肥料や除草剤などの農薬の多投によって腐植が減少し、団粒構造が破壊され、土壌の微生物相が単純化してしまったことで問題になっている土壌の劣化。そして、肥料・飼料・農業機械・燃料が高騰し、特に化学肥料の約95%を海外に依存している我が国の農業コストの高騰などの課題に向き合うなかで、海外に依存しない地域完結の低コスト&循環型農業の確立と、次世代に健全な土壌を継いでいくための土壌づくりや生物多様性の保護を目的に取り組んでいく農業の仕組みと技術体系のことである。

このリジェネラティブ農業の提唱者は、アメリカのノースダコタ州で2000ヘクタールの農業経営に取り組むゲイブ・ブラウン氏である。氏は4年連続の気象災害で経営危機に陥ったことで、肥料も買えないどん底の状態で、肥料を与えないことで、自身の畑の土が変わってきたことに気づき、その技術分析と実証実験から、化学肥料を全く使用しないようになり、リジェネラティブ農業技術を体系化してきたという経過である。
リジェネラティブ農業とオーガニックの違いということで整理すると、農薬や化学糊料を使用しないという原則は変わらないが、リジェネラティブ農業は、畑を耕すことを推奨せず、畑の表面を裸にしないために、カバークロップ(被覆作物)は必須であり、輪作・混作を奨励するというところが、その違いとされるところである。

リジェネラティブ農業の基本は、健全な土壌を育てるということであり、そのためには下記の5つの原則を大切にしている。

1.土をかき乱さない

土を機械的、化学的になるべくかき乱さないという原則である。土は過剰な耕耘をすると団粒構造を作っている天然の糊が土壌微生物に消費され、劣化していく。過剰な耕耘はかえって土壌の生物性・物理性を損なうので避けるべきである

2.土の表面を覆う

土の表面を直射日光の高温、強風、豪雨から守るという原則である。土の表面が覆われることで、雑草の成長が抑えられ、夏でも表面温度を抑え、水分の蒸発を抑えることになる。また、風や雨による土の侵食を防ぐとともに、有機物の供給になる3.

3.多様性を高める

圃場生態系の多様性(ダイバーシティを高めるという原則である。とにかく可能な範囲で多様な種類の作物を栽培することが大切。緑肥なども混植するとなおよい。植物の種類を多くすることで、害虫の影響も小さくでき、益虫の勢力の増大によって、害虫が抑制される。

4.土の中に生きた根を保つ

土壌が植物をつくるのではない。植物が土壌を作るのだ。これは、前回までのコラムでもお伝えしてきた、植物の根は土壌から養分を一方的に吸うのではなく、生きた根と生きた土壌を繋ぐ、根圏微生物との共生によって生きているというオーガニックの原則である。根はこの根圏微生物のエサとなる物質を光合成産物から供給し、それらのエサとする微生物が媒介して、土壌から養分を溶かし、植物が吸えるところまで分解をすすめるという、生きた根と生きた土壌との共生関係である。つまり、生きた根を土中にできるだけ多く活発に入れるということが、一番の土づくりであるという考え方である。

5.動物を組み込む

反芻動物が草を食むことの重要性という原則である。植物は3~4割程度食べられると傷を治そうとする。また、牛と羊が好む草は異なる。そして、鶏は農場の穀物残渣を資産に変える動物である。そして、肉や卵も収益源の分散化につながるということである。

以上の通り、次世代に健全な地球環境を紡ぐリジェネラティブ農業は大きな可能性を秘めている。オーガニック+リジェネラティブ農業に取り組む意義は予想以上に大きいのではないかと考える。最後にまとめとして、「小さな変化を起こしたいなら”やり方”を変える 大きな変化を起こしたければ”ものの見方”を変える」この姿勢で今後の理想的な農業を皆様とともに追求していきたいと思う。

次号に続く

 

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