
兵庫県の学校給食にオーガニックを ~(株)泉平さんとの取り組みが始まる~
みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.35
2025年4月 業務執行理事 南埜 幸信
学校給食や病院等のパブリック給食にオーガニックをと、みどりの食料システム戦略実現のためにこの戦略の重要性が宣言されて久しい。ところが、コメのような貯蔵型の農産物はストックが可能なので、ジャストインタイムの献立に合わせての納品は比較的容易だが、野菜や果物などの生鮮物は大変ハードルが高い。学校給食にオーガニックというテーマを柱にオーガニックビレッジの基本政策を進める多くの市町村も実はこれを生鮮農産物で実現した事例は本当に少ない。
そもそも学校給食は福祉なのか教育なのかという原点の議論はまだまだ結論を見出すのは難しいが、最近の給食無償化の議論を聞いていると、まさしく福祉的な要素が高くなっている。よって、ますます献立に入っていてそれを欠品するということは許されない状況になっている。また無償化の流れのなかで、食材費の高騰により、ますます予算建が厳しくなり、単価の高い食材が使いにくくなっている等、オーガニックを導入するハードルは高くなるばかりというのが現場の状況かもしれない。まして、献立で採用されるかどうかということと、農産物の出荷のペースが合致するというのは本当に難しい。
いずれにしても、学校給食にオーガニックは幅広い献立に実現していくのは難しい現状がある。しかし、関西の自治体では首長の積極的な旗振りで多くの課題を認識しながらも、給食は教育の一環として、食育への取り組み予算ということでオーガニック給食の実現をめざす自治体が着実に増えてきているのは頼もしい限りである。
先日、この学校給食に長く食材を納品してきている(株)泉平の社長と部長以下の担当者と、コープ自然派と一般社団法人日本有機加工食品コンソーシアムとのコラボで、オーガニック食材を開発して提案していくチームを創ろうという話し合いを行った。特に一般社団法人日本有機加工食品コンソーシアムで一昨年から取り組んできている、国産のオーガニック冷凍野菜という原料を柱に、オーガニック原料使用の総菜まで共同開発しようというチャレンジだ。しかもこの開発総菜を学校給食への提案だけではなく、コープ自然派のチャネルを通して、それぞれの家庭で購入いただき家族全員で子供と同じものを食べるという、究極の家庭食育の場を提供していきたいという試みだ。
生協と給食納入業者が組めば、こんな素晴らしい会話を食卓に提供できる。オーガニックがさらに食卓の話題になる。こんな光景を想像して今から実現に向けてワクワク感が高まってきている。
オーガニックの冷凍野菜は、それだけで料理素材としての役割を果たせるが、加工食品の原料としても大きな役割を持っている。たとえば皆さんが瓶詰やレトルトなどで利用される、離乳食の原料のほとんどは冷凍野菜だ。つまり、国産のオーガニック冷凍野菜を拡大したことで、国産のオーガニック原料を使用した総菜の開発が可能になり生鮮のように価格がブレないことで、予算の決まっている学校給食に活用しやすいオーガニック農産物が確保できることにつながってくるのである。
一般社団法人日本有機加工食品コンソーシアムのオーガニック冷凍野菜は、特に有機ほうれん草は取り組み2年目で第一段階の原料50トンを達成し、今年の秋は100トンを目指す勢いになっている。有機にんじんはもちろん、北海道の旭川で有機冷凍工場の確保ができたことで、有機じゃがいも、有機たまねぎも視野に入ってきた。これらをベースに、子供たちに美味しいオーガニック総菜をどんどん安定供給できるように、さらに生産者と加工メーカーに、パワーアップをお願いしていきたい。皆様の要望がございましたらぜひコンソーシアム事務局にお知らせください。一緒になってオーガニック給食実現チームを動かしていきましょう。
次号に続く