Blog

  1. HOME
  2. ブログ
  3. レポート
  4. 国産有機ひまわりオイルの誕生

国産有機ひまわりオイルの誕生

みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.61

2025年10月 業務執行理事 南埜 幸信

植物油の自給率はわずか2%。この現実を抱えたままで、農水省はじめ、様々な関係者の意見を求めても、油脂作物を栽培しても、経済的に割りに合わないので、やめたほうが良いですよと言われ続けている。しかし、農業経営をもう少し広い枠組みで考えたときに、成立する世界があり、それを基盤にして、国産油脂の自給率を上げていく道ができるのではないかということと、油脂植物が緑肥として、有機農業における土づくりの役に立つ可能性が大きいということ等、単に作物を栽培して、その収穫物を販売するという農業の基本スキームから、地域経済や環境資源や関係人口の拡大など、従来の農業では関われなかったいステークホルダーとの新しい発想のチーム編成が可能で、その地域資本のなかで、油脂植物栽培を進めていくことが可能かもしれないという、新しいクラウドファンディング的農業経営の姿を目指したいと、とにかく実際に前に進め、頭で否定する人たちが納得するモデルを出したいと、今年の春から取り組みを進めてきた。

まず、有機農業での取り組みではないが、油脂用ひまわり栽培の先進地である香川県のまんのう町にお伺いし、栽培の圃場から、収穫後の選別・調整・焙煎・搾油の工程を視察させていただき、これは実現可能性が高いと肌で実感した。まんのう町の取り組みは、最初は水田転作がきっかけで、転作田を一か所に集約し、そこで、町の観光資源として、町おこしの一環として、ひまわり団地を形成し、観光産業から資金を調達しながら、幸せの黄色いウェーブということで30年以上にわたり、油脂用ひまわり栽培を続け、搾油したものは、良質なオレイン酸の含有に優れるひまわりオイルとして、そして、オイルといえばドレッシングということで、地元のかんきつと合わせたドレッシング商品まで開発販売している。そして、観光産業としては、ひまわり迷路などの観光に集客の源として貢献し、加えてひまわり生命保険会社など、ひまわりを企業の看板とする企業ともコラボし、事業資金を調達している。しかも、圧搾で絞った後の油粕を地元の牛のエサとして活用し、「ひまわり牛」ブランドを育成したり、油粕として地元の農家の有機肥料として活用いただくという事業展開を進めている。

加えてひまわりは、緑肥としての土づくり性能にも優れている。ひまわり大量の生きた根を土中に張り巡らし、その根圏には、土中の水に溶けにくいリン酸肥料を水に溶けるように加工できる能力の高い菌根菌を豊富に自生させる能力にも優れている。つまりは、土壌微生物の力で土づくりを進めていく能力が高いといわれている。
加えてひまわりは、アレロパシー(他感作用物質)として、雑草を抑制する物質を周りに供給する能力もあることから、雑草に席巻されやすい耕作放棄地の有機農業による復活にもたいへん力のある相棒と期待できる能力もある。

加えて、ひまわりの花は、蜜を持つ小さい花の集合体であり、蜜のある花の少ない夏場のミツバチの蜜源としてたいへん貴重な作物でもある。地域の養蜂家とのコラボ導入にも積極的に評価される能力も有している。そして、ゴマと違い、収穫から乾燥調製まで、現在すでに普及が進んでいる汎用コンバインと穀物乾燥機で機械による一貫作業が可能であることから、大面積での栽培にも現場が十分に対応できることもその普及に拍車をかけてくれると感じている。しかも病気や害虫に強く、有機栽培での取り組みも容易である。

現在各地で鑑賞用として栽培され、観光資源として注目されているひまわり。これを油脂用の種に変えるだけで、国産の良質なひまわりオイルの獲得の道筋が見えてくると思う。農業は、このような植物の導入で、地域の経済の要として、地域の資金をいただきながら、次のステージに展開できるような脱皮ができると期待している。
今年、このような話し合いをしたうえで、千葉県の有機生産者に、60aの試験栽培に取り組んでいただいた。この成果は、近いうちに油脂植物の栽培シンポジウムを開催し、その中で世の中に報告したいが、一歩早く昨日、下の写真のように、搾油した油が届いた。夢はあきらめなければ実現する。その言葉に確信を得たのである。

次号に続く

関連記事